北海道西部の日本海に突き出た積丹(しゃこたん)半島はニセコ積丹小樽海岸国定公園内にあり、断崖絶壁の躍動感ある自然と海岸線が続く勇壮な半島です。そして同国定公園内に属する、積丹郡積丹町の神威岬(かむいみさき)はメインスポットであり、壮大な眺めと真っ青な海を堪能できます。その唯一無二の眺めを体験しに、神威岬を訪れてみました!
突き出た積丹半島から突き出た岬
積丹町の神威岬は札幌中心部から西北へ102㎞の場所にあります。積丹半島は日本海に突き出た半島で、その北西部の突端に突き出ているのが神威岬です。車だと2時間余りの距離にあり、筆者は小樽までJRに乗り、小樽駅から北海道中央バスの積丹線に乗車。終点が神威岬駅となります。神威岬行きは1日3本、札幌駅前からは「高速しゃこたん号」が1日1本、4月後半から10月後半まで運航しています。公共交通を乗り継ぐと、約4時間かかることを覚悟してください。北海道は広いのです。
道中は長いですが、その行程は小樽ニセコ積丹海岸国定公園の海岸沿いを走ることが多く、その断崖と澄んだ青い海を眺めながらの快適な旅となります。筆者が訪れた日はまさに快晴。景観を見るには絶好の日よりでした。
駐車場から約40分をかけ岬の先端へ
路線バスは開放感あふれる丘陵地帯を上り、神威岬バス停へ。バスを降りると、広い駐車場が整備されており、さらに売店と食堂も備え付けてありました。実は筆者が神威岬に訪れたのは約20年ぶり。その時はもっと寂しい状態で売店もなく、野趣あふれる景色でしたが、近年の人気によりすっかり観光地化されていました。
遊歩道入口には大きな岬の案内版があり、そこからアスファルトで整備された道を登って行きます。
駐車場から先は当然のごとく、トイレなどもありませんので、歩く前に済ませてしまうこともオススメします。また道のりは意外と長いので、晴れている夏場は特に水分の携行も必要でしょう。
坂を上りきると、いよいよ神威岬の入り口です。「女人禁制の地」と書かれてあります。神威岬は西蝦夷三険岬と言われるほど、海路の難所として恐れられ、海難事故も多発していました。そして義経伝説の中で伝わる「チャレンカの悲劇」と重ね合わせ、岬一帯は女人立ち入り禁止となったようです。しかし、その禁制が説かれたのは安政2年(1855年)のことですから、今は男女とも自由に入ることができます。門の開門時間は季節により変わりますが、夏場は朝8時開門、夕方6:00~6:30ごろの閉門となりますが、天候などに左右されます。
360度のパノラマと積丹ブルーの海
すでに、この門から岬の先端部が見渡せます。そして期待が否が応にも高まりますね。
はい、この門からすでに絶景が始まっていました。澄み切った青い海、そして青空、青の世界に突き出た断崖絶壁の岬、期待に違わぬ光景です。岬の先端まで約770mあります。男性ならばひと息に歩くと30分弱かかりますが、この日の岬はこの天気ですから撮影スポットだらけ。スマホ撮影の方でもたっぷり40~50分はかかると思います。筆者はタップリ1時間半をかけ撮影しました。
岬方面だけではなく、スケールの大きい積丹半島の海岸線や山並みも美しく、どこを見ても絶景と言えるほどで、言葉を失います。岬の先端部までの距離はそれほどないのですが、断崖絶壁を縫うように通した遊歩道を歩きます。アップダウンが激しく結構疲労すると思います、さらに高所なので高所恐怖症の方は背筋がヒンヤリする経験をするかも。
門から遊歩道を5分ほど歩くと、このような看板に当たりました。
晴れた日の神威岬はビュースポットだらけなのですが、その中でも代表的なスポット、念仏トンネルの看板です。
絶壁の下に仏の穴が開いているのが分かりますが、右側の小さい方が念仏トンネルです。念仏トンネルの由来は、この周辺は波が激しく度重なる海難事故が多かったので、大正3年、地元民たちはトンネルを掘ることにしました。絶壁の右側と左側から掘り進めましたが当時の掘削技術の未熟さのため、中央で食い違いが起きたとか。そこで、これまでの犠牲者を弔う供養も含め双方の穴から念仏を唱えた所、その声で方向がわかり開通しました。それ以来「念仏トンネル」と呼ばれるようになったそうです。
もちろん、現在は降りることはできません。そして、この念仏トンネルを眺める海岸線は圧倒的な積丹ブルーが美しいビュースポットです。
まるで沖縄など南の海のような積丹ブルーに目を奪われてしまいます。この海はウニやホッケ、カレイ、イカなど海産物の宝庫の海でもあります。
さて、門から半分ぐらいの場所まで来たでしょうか。とにかくアップダウンがあります。できれば、女性などはサンダルやハイヒールで歩かない方が良いでしょう。それでも、若い女性などはヒールで歩く強者の方もいましたが。筆者は一応、トレッキングシューズで歩きました。変化のある岬の景色を堪能しながら歩きます。
海岸線や積丹ブルーだけではなく、足元を見れば、北海道の草花が咲いています。初夏は黄色いエゾカンゾウやエゾスカシユリが綺麗です。筆者が来た時は、紫色のツリガネニンジン、エゾフウロなどが花を咲かせていました。神威岬は花好きの方にもオススメと言えます。
岬へもかなり近づいてきました。後ろを振り返ると、結構な難所を歩いてきたことがわかります。振り返った光景もまた圧巻です。
「こりゃ、すげえな」とブツブツつぶやきながら撮影する自分がいました。あと、遊歩道の幅が狭い場所が多いので、譲り合いの精神も必要です。
むき出しの岩石と砂岩も印象的。どこか中東など外国にも似た雰囲気があります。灯台も見えてきました。岬はもうすぐです。
圧巻の積丹ブルーとカムイ岩の景色に感動!
神威岬灯台は北海道庁が明治21年(1888年)から6年に渡って20基の灯台を建設した最初の灯台で、同年8月25日に初点灯しました。北海道に現存する灯台では5番目に古いもので、現在も稼働しています。灯台を過ぎると、見えてきました。周囲300度が見渡せるすばらしいパノラマの景観と、澄み切った青空と積丹ブルー一色の世界が!
息を弾ませながら到着した方々は皆さん「ウワーッ!」「キレーイ!」「スゴーイ!」と感嘆の声を挙げます。どの角度から、どんな形で撮影しても素晴らしい写真になる、素晴らしい光景です。眼下に見える岩場の一番大きい突き立った岩が神威岩と呼ばれています。前述した、義経伝説の「チャレンカの悲劇」の言い伝えの残る岩で、澄み切った海中に立ち尽くす「乙女の化身」と言われています。
岬からの景色に良いスパイス役にもなっています。ひとつ気づいたのが、岬の展望台の柵外の岩場に、大量のお賽銭があったこと。
特に、神社や風習があるわけではありませんが、神威岩を神として崇める風習が自然とできたのでしょう。そういえば神威岬の名の由来はカムイはアイヌ語で「神」を意味します。古くはオカムイ岬とも呼ばれていましたから。アイヌ人々はこの岬を神の宿る岬として祀っていたのでしょう。
とにかくどこから何を眺めてもすばらしい景色でした。岬を戻り、門をくぐった跡、左折するところにも遊歩道があり、2カ所の展望広場があります。
明治後期、神威岬沖合にロシア軍艦が出没した事件があり、ロシアの脅威にさらされていた北海道。昭和15年にソ連軍が北海道上陸の情報をつかむために無線塔1基、レーダー2基の建設を着工し、昭和17年に完成しました。これは電磁塔(電波探知塔)の遺構です。そういえば岬の先端にもコンクリートや階段の残骸もありました。戦争の名残はこのようなところにもありました。
電磁塔のある展望台からさらに奥にすすむと、駐車場の上にある展望台があり、ここからは岬全体が望めます。
駐車場を望む景色もまた綺麗です。其の後、駐車場へ降りました。結局、タップリ4時間を使った行程でした。できれば、マジックアワーや夕陽も観たかったですが、小樽駅前行のバスの最終が午後3時18分。売店でオリジナルの日本酒「神威岬」を買って、バスに乗りました。
まとめ
久々の神威岬を体験し、想像以上の素晴らしい景観に圧倒されました。夏場でも、心地良い海風が吹いていて、涼しいです。とにかく、北海道でも唯一無二の景色。沖縄のような積丹ブルーは神秘的でさえありました。平日でも多くの観光客が訪れていて、今では北海道でも人気スポットだと感じます。できれば晴れた日がオススメです。北海道の素晴らしさの一端を満喫することができますよ!
▽スポット情報
神威岬
住所:北海道積丹郡積丹町神岬町
TEL:0135-44-3715(積丹観光協会)
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